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タグ: 小説家になろう

STG/I:第七十二話:クソゲー

自殺。

言われて気付いた。

自分の命の落とし所を考えてのヒロイズム行為と問われれば「違う」とは言い返せない。

心の奥底に潜む「終わりにしたい」という無意識の塊。

地球を守るという体の自殺。

シューニャは頭を抱え項垂れると頭に爪を立てた。

頭を握りつぶさんばかりに十指を食い込ませる。

「でも・・・隕石型宇宙人に食われるか、ブラック・ナイトに食われるかの差でしかないんじゃないですか。どっちがいいというわけでもない・・・。仰るように私がアレに乗ることは破滅のBプランでしかないような気がしないでもない・・・だとしても、時間は稼げる。時間は何よりも代えがたい。タイム・イズ・マネー。時は金なりと言いますが、実際、金以上です。時は代替がきかない。その時を稼ぐことに意味が無いってサイキさんは言うんですか?」

STG/I:第七十一話:紡いだ言の葉

サイキは頭を乱暴にかき乱すと、何度か自分の頬を叩いた。

声にならない呻き声を上げ、項垂れた。

「単なる推測ですが・・・」

「なんでもいい・・・言ってくれ。俺に構わず。全部。全部言ってくれ」

「マザー達の真の狙いはブラック・ナイトなんじゃないですかね?」

サイキは顔を上げた。

STG/I:第七十話:サイキ

思いを巡らすほど焦燥感は拭いきれない。

宇宙が動き出した時、一体何が出来るというのだろうか。

自分の身体だっていつ動かなくなるかわからない。

以前みたいに発作めいたものが起きた時に投入出来る薬剤もない。

自分の肌は四日と正常を保てないのも明らか。

多少体力が向上したとは言え、無理をして動けるのはせいぜい数日といったところ。

STGIを得たところで大海の一滴なのは明らかだ。

STG/I:第六十九話:暗中模索

ミリオタさんの話はこれといって大したものではなかった。

静の新衣装について意見を聞きたかったらしい。

しかも静がシューニャを呼んで欲しいと懇願したからだそうな。

静は顔を赤らめ「いかがでしょうか」と言い、くるりと回った。

衣装は巫女。にしては少し露出度が高めな気がするが。腰のスリットが大きい。

個人的には古式ゆかしいデザインの方が好みだが。

STG/I:第六十八話:青い鳥

三日が過ぎたがシューニャはSTGIには乗っていなかった。

 

フェイクムーン撃退(公式虚偽)というお祭り騒ぎも一通り鎮まり、隕石型宇宙人の襲来の警報もなく、ロビーは何事もなく日常に戻っている。皆はそれぞれ元の生活に戻り、本部に警告した事柄が一般の搭乗員へアナウンスされることは無かった。

考えようによっては無理もないかもしれない。何せ自身の部隊員ですら説得できたわけではない。部隊員を招集し、現在ブラックナイト隊兵器開発部では対巨大隕石型宇宙人への主力武装の開発と、超小型隕石型宇宙人への対抗策を練っていると伝え、今後そう遠くないうちに隕石型宇宙人の大規模な進行が始まるだろうと告げた。

当然ながら質問が出る。「何を根拠に?」対して「STG21からの警告です」と答えた。その後の様子は想像に難くないだろう。議論にならない対話に終始した。饒舌なシューニャは最終的に口を閉ざした。そもそも根拠が無いに等しい。議論するような状態ではない。最早こうしたテーマでは ”その人自身を信じるか信じないか”  という極めて曖昧な世界に入ってくるからだ。下手をすれば新興宗教的世界。説明をつけることは簡単だった。むしろ得意と言える。全てに説明はつけられるのだ。それだけに説得をしないことにした。言いくるめていいような事案ではない。命、生き方が関わってくる。それは到底背負えるものではない。

STG/I:第六十七話:STGI

ログインするとハンガーにそれはあった。

 

シューニャはポカンと口を開け、目をひん剥いたまま呆然とソレを見た。

ミリオタが見ていたらスクリーンショットをとられ映像素材にされていただろう。

 

声が出なかった。

 

「・・・ハンガーを間違えたか」

STG/I:第六十六話:顛末

サイキさんと別れてシューニャになると真っ先に頭に浮かんだことがあった。

マザーの一件である。

地球におけるSTG28の放棄か残留かの選択。

マザーワンに驚異が去ったことを伝える必要がある。

私には妙な確信があった。

STG/I:第六十五話:混濁

音がする。

 

音が、戻ってきた。

 

過去の経験から、五感のそれぞれは現世界との繋がりの強さを表している気がした。

言い換えれば生きている証。

音は最後の最後まである感覚と思っている。

逆に一つ無いし複数の感覚が途絶えた世界の住人は、他の感覚がそれを補う。

全ての感覚が遠ざかった時、現世との別れの時が来たことを意味するのだろう。

音の世界を持つ住人が死に面すると、音が最後に遠のく気がする。

祖母がそうだった。

STG/I:第六十四話:淵

管の中をビーナスはウミヘビのように泳いだ。

 

STGのメンテナンスは外殻内部の生体組織とナノマシンにより自動的に行われているが、バランス限界を越えた自己修復不能な事象に対して搭乗員パートナーが事に当たる。逆にパートナーはSTGの生体組織からエネルギーを供給され、病や故障が無いのもSTのお陰である。よってパートナーは食事を必要としない。またSTGで修復不能なパートナーの事象は本拠点施設で施術される。パートナーとSTGは共生関係にあった。双方はそれぞれコア(脳機能に相応する部位)を持ち独自に思考をする。マザーとは常時接続され、膨大な能力のバックアップを受けられる。共に最優先の使命は搭乗員の安全であるが、搭乗員・パートナー・STGの順に決定権は決まっている。命令を施行することで搭乗員の安全が著しく脅かされる可能性がある場合は基本的に受理されないが、竜頭巾が使用したデス・ロードのように、特定の承認プロセスをとることで最終的には搭乗員の命令が実行可能。

パートナーはありとあらゆる場所へ侵入出来る専用の通路があり、そこは専任のパートナー以外は通ることが出来ない。無数の管は人間の血管のように張り巡らさせ半ばゲル化した液体で埋まっている。血管を巡る白血球のように自在に泳ぎ、外敵を排除する役目もパートナーにはあった。内部へ侵入された際の白兵戦用装備も多数もつ。

 

ビーナスはコックピットのメイン通路にポトリと落ちた。

STG/I:第六十三話:静、無残

「長門後退、ホムスビ前へ出る」

「おい・・・ちょっと待てよ。話が違うぞ!」

「後退だっ!」

声を張り上げていた。

「・・・」

長門がゆっくりと下がっていく。

マルゲリータが悲痛な顔を向け、声なき声を上げる。

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