zyuge – ジュゲの小説 Skip to content

作者別: zyuge

STG/I:第六十八話:青い鳥

三日が過ぎたがシューニャはSTGIには乗っていなかった。

 

フェイクムーン撃退(公式虚偽)というお祭り騒ぎも一通り鎮まり、隕石型宇宙人の襲来の警報もなく、ロビーは何事もなく日常に戻っている。皆はそれぞれ元の生活に戻り、本部に警告した事柄が一般の搭乗員へアナウンスされることは無かった。

考えようによっては無理もないかもしれない。何せ自身の部隊員ですら説得できたわけではない。部隊員を招集し、現在ブラックナイト隊兵器開発部では対巨大隕石型宇宙人への主力武装の開発と、超小型隕石型宇宙人への対抗策を練っていると伝え、今後そう遠くないうちに隕石型宇宙人の大規模な進行が始まるだろうと告げた。

当然ながら質問が出る。「何を根拠に?」対して「STG21からの警告です」と答えた。その後の様子は想像に難くないだろう。議論にならない対話に終始した。饒舌なシューニャは最終的に口を閉ざした。そもそも根拠が無いに等しい。議論するような状態ではない。最早こうしたテーマでは ”その人自身を信じるか信じないか”  という極めて曖昧な世界に入ってくるからだ。下手をすれば新興宗教的世界。説明をつけることは簡単だった。むしろ得意と言える。全てに説明はつけられるのだ。それだけに説得をしないことにした。言いくるめていいような事案ではない。命、生き方が関わってくる。それは到底背負えるものではない。

STG/I:第六十七話:STGI

ログインするとハンガーにそれはあった。

 

シューニャはポカンと口を開け、目をひん剥いたまま呆然とソレを見た。

ミリオタが見ていたらスクリーンショットをとられ映像素材にされていただろう。

 

声が出なかった。

 

「・・・ハンガーを間違えたか」

STG/I:第六十六話:顛末

サイキさんと別れてシューニャになると真っ先に頭に浮かんだことがあった。

マザーの一件である。

地球におけるSTG28の放棄か残留かの選択。

マザーワンに驚異が去ったことを伝える必要がある。

私には妙な確信があった。

STG/I:第六十五話:混濁

音がする。

 

音が、戻ってきた。

 

過去の経験から、五感のそれぞれは現世界との繋がりの強さを表している気がした。

言い換えれば生きている証。

音は最後の最後まである感覚と思っている。

逆に一つ無いし複数の感覚が途絶えた世界の住人は、他の感覚がそれを補う。

全ての感覚が遠ざかった時、現世との別れの時が来たことを意味するのだろう。

音の世界を持つ住人が死に面すると、音が最後に遠のく気がする。

祖母がそうだった。

STG/I:第六十四話:淵

管の中をビーナスはウミヘビのように泳いだ。

 

STGのメンテナンスは外殻内部の生体組織とナノマシンにより自動的に行われているが、バランス限界を越えた自己修復不能な事象に対して搭乗員パートナーが事に当たる。逆にパートナーはSTGの生体組織からエネルギーを供給され、病や故障が無いのもSTのお陰である。よってパートナーは食事を必要としない。またSTGで修復不能なパートナーの事象は本拠点施設で施術される。パートナーとSTGは共生関係にあった。双方はそれぞれコア(脳機能に相応する部位)を持ち独自に思考をする。マザーとは常時接続され、膨大な能力のバックアップを受けられる。共に最優先の使命は搭乗員の安全であるが、搭乗員・パートナー・STGの順に決定権は決まっている。命令を施行することで搭乗員の安全が著しく脅かされる可能性がある場合は基本的に受理されないが、竜頭巾が使用したデス・ロードのように、特定の承認プロセスをとることで最終的には搭乗員の命令が実行可能。

パートナーはありとあらゆる場所へ侵入出来る専用の通路があり、そこは専任のパートナー以外は通ることが出来ない。無数の管は人間の血管のように張り巡らさせ半ばゲル化した液体で埋まっている。血管を巡る白血球のように自在に泳ぎ、外敵を排除する役目もパートナーにはあった。内部へ侵入された際の白兵戦用装備も多数もつ。

 

ビーナスはコックピットのメイン通路にポトリと落ちた。

STG/I:第六十三話:静、無残

「長門後退、ホムスビ前へ出る」

「おい・・・ちょっと待てよ。話が違うぞ!」

「後退だっ!」

声を張り上げていた。

「・・・」

長門がゆっくりと下がっていく。

マルゲリータが悲痛な顔を向け、声なき声を上げる。

STG/I:第六十二話:孤独なる出撃

フェイクムーンの情報が途絶えた際、日本・本拠点・本部委員会は辛うじて平静を保っていた。ある噂が発端で均衡は破られ狂騒曲は始まる。噂とは「マザーが地球を放棄する」というもの。

噂はバランスを崩し、危険を察知した本部委員会は「嘘である」事を前提にことの真偽を確認するポーズをとる。言質を取れば直ぐに収まるだろうと安易に考える。

ところがマザーに問い合わせたことが致命的な事態を招く。

STG/I:第六十一話:アンドロイド

「ビーナス」

「はい」

ホログラム化された彼女が横に立つ。

「静はどう?」

「動力炉の交換と接続は終わりました。まだ化粧は終わっていませんが」

「化粧?」

「今は動力炉と腹部の金属が見えた状態です」

「そうか・・・でも動けるんだね?」

「動けます」

「静には悪いが・・・やってもらうしかない」

「コアは本当にそのままでいいのですか?」

「ああ構わない。アンチウィルスだけかけといて」

「それは済ませましたが・・・」

「異常は?」

「ありません」

良かった。

ビーナスが何か言いたげだ。

「気変わりはしないよ」

「・・・わかりました」

STG/I:第六十話:賭け

シューニャは休憩の号令を発する。

猶予を与えたいと思った。

土台敵わない相手。

自分を含め、それぞれが決断を下す為の「間」が欲しい感じた。

勤め人時代にそれで自分が助けられたことがあるからだ。

パニックの中にいて落ち着くことは出来ない。

静かな場所で精神をリセットするこが大切だと実感している。

STG/I:第五十九話:パンドラの箱

本部の罵声を浴びながらもシューニャは妙に落ち着いていた。

 

静がもたらした情報が想像以上のものだったからかもしれない。

パッケージ化されたそれらのほとんどは隊長のみ閲覧可能な権限が付与されている。暗号文の前置きにはテキストメッセージでこうあった。

 

「奪えるものはのべつ幕なし、与えるものは最小限に」

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