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黄レ麗:第五十七話:女生徒達

クラス中が僕を無視する中、唯一応えてくれる人がいた。
それは大天使ナメカワ。
クラスはおろか、学校で一目も二目も置かれている才女。
何より可愛い。可愛すぎる!
彼女だけは僕の挨拶に応えてくれた。
それがどれほど救われたか彼女は知らないだろう。
でも、だからこそ、彼女を巻き込んではいけない。
「おはよう」
「おはよ」
繰り返される何気ない言葉。
彼女はいつも笑顔で応えてくれる。
以前なら挨拶の後で僕に気軽に話しかけてきてくれたこともあったけど今はクラスの雰囲気を察してか、僕が発しているオーラが原因か、話しかけてこない。
これは僕にとって幸いだった。でなければ、僕は彼女を無視するしかない。そんなこと辛すぎる。まるで裏切り行為だ。でも、僕と彼女が親しげに声をかけあっていたら彼女も巻き添えになるだろう。
それは避けたい。
(ナメカワさん、ありがとう)

想像以上ってところね。
マーさんを舐めていたかもしれない。
人は見かけによらないと言うけど。
彼は直ぐに音を上げると思っていた。
予想を遥かに超えて踏ん張る。
(あの表情・・・読めない)
平気なのかな?
これほどまでクラスから孤立しているのに。
まさか耐えられるとは思わなかった。
すぐ音を上げると。
私に相談しにくると思っていたけど。
麗子は例外として、マーさんが話せるクラスメイトは私しかいない。
まさか彼女は彼のこんな強さに惹かれているとか?
いや、おかしい。
ならどうして彼女まで無視する?
口裏を合わせたのかな。
彼女はマーさん以上に何を考えているかわからない。
ヒロイズムにでも浸っているのかしら。
万が一そうなら長引くとマズイ。
吊り橋効果ってこともある。
二人で危機を乗り越え、恋心が生まれるということもある。
不思議なのはそれだけじゃない。
マキくん。
マーさんの頼りだったはずのマキくんら三人はどうして彼と仲違いしているんだろう。二人はクラスのムードに飲まれたとしてもマキくんは彼を擁護すると思ったのに。彼をどう崩すかはキーだった。
男の友情なんて脆いってことかな・・・女ほどではないでしょうけど。
よくわからないことばかり起きる。
恐らく「名無し2号」は彼かと思ったけど検討違いかしら。
クラスでも彼はまるっきりマーさんを毛嫌いしているように見える。あの不器用そうな彼が芝居をうてるはずもないだろうし。
何があった?
マイ子に聞きたいけど彼女は彼女で荒れているし。
今色々動くのはマズイわね。
他は大体予想通りってところかな。
ナガミネさんの様子が少しおかしいぐらい。
でも彼女は普通がおかしいからよく解らない。
マーさんのことを好きだとかいう噂もあるけど。
文化祭の恋人役で好意をもったって線はありね。
万が一そうだったとしても、彼女なら幾らでも、どうとでもなる。
それとも何か感づいているのかしら。
あの一角は本当によく解らない。
おない年とは思えないわね。
何が楽しくてあんな子供だましが好きなのか。
さてマーさん・・・もう頼れるのは私しかいないのよ。
泣きつくなら早いほうがいいよ。
ギブアップすれば苦しまずに済む。
苦しむ?
そうだ、私のモヤモヤは、彼が堪えているように見えない点だ。
今の彼はまるで平気な顔をしている。
初めこそは戸惑っているようだった。
でも三日目か四日目ぐらいから急に顔が変わったような気がする。
まるでこれが普通の、日常のように受け入れているようですらある。
まるっきり落ち着いて見える。
(本なんか読んじゃって)
太宰治の人間失格。
それが読めるってことは堪えていないってこと?
それとも自分に酔ってる?
やせ我慢?
そこまで考えるような人かな。
お昼もお一人様みたいだし。
堪えてないの?
解らない。
まさかマーさんレベルでここまで予想を裏切られるとは思わなかった。
よっぽど大学生の彼より大人。
好きになるレベルではないけど・・・ちょっと気になるわね。
これ以上待っても戦果がないようなら動くしかないかな。
直ぐ落ちたら早かったのに。
もし私と根比べしようっていうのなら負けないわよ。
負けず嫌いだから私。
「名無し」さん、せいぜい頑張って。

マーちゃんはあの女に騙されている。
あんな針金みたいなヤツのどこがいいの?
私に振り向かないのはアイツがいるからだ。
アイツを引き離さないと。
なんで離れないの。
あの目、あの目は好きな目だ。
悔しい。
振られたのにどうしてあんな目が出来る!
何がいいの。
顔さえ良ければいいの?
そんなにアイツの顔がいいのか!
騙されているんだ。
きっと寝ているんだ。
二人で。
女を武器にしてたらしこんでいるんだ卑怯者!
別れろ!
別れろ!
別れろ!
麗子、麗子、何が麗子だ!
何がウルワシイ子だ。
どこが麗しい。
汚い格好。
ボサボサの髪。
足りない頭。
顔だけだ。
顔さえ良ければいいのか!
麗子、私のマーちゃんの頭から消えて!

マーさんには言えないな。
自分は秘密にしないでって言ったのに。
ズルい。
女だから。
男だってもっとズルい。
スズノさんが昨日来た。
マーさんが言っていた元カノ。
あの子がマーさんと付き合っていたのか。
マーさんも私に負けず劣らず人を見る目が無いのね。
一方的に話をして、一方的に怒って、一方的に泣いて。
彼女もあれで大変なんでしょうね。
でも関係ないから。
「彼のことどう思っているんですか?」
「どなたですか」
「スズノと言います」
「存じあげませんが」
「彼女です」
(あー・・・話に聞いている、あの子か)
可愛らしい子ね。
マーさんも隅に置けない。
何よマーさん、私のこと好きだとか言いながら、こんな可愛い子がいるんじゃないの。「今はなんとも思ってない、妹のように感じている」って言ってたけど、どうだか。男は結局のところ下の命令に逆らえない生き物だから。
「どんな御用ですか?」
「彼の心を惑わさないで下さい」
「どういう意味かわかりませんが」
「彼は貴方のことが好きなんです」
「そうですか」
「そうですか?・・・・しらばっくれないで!」
「話が出来ないようならこれで失礼します」
三十六計逃げるに如かず。
「逃げるの!」
マーさんの元カノじゃ殴り倒すわけにもいかないし。
喋るの苦手なんだけど。
「私がいつ彼を惑わせたと?」
「嫌いなら、きっぱり振ってくれないと困ります」
「ふりましたよ」
「ならどうして今も付き合っているんですか」
「友達ですから」
自分で驚いた。
忘れていた言葉。
私には無関係な言葉。
遠い記憶。
忘れた記憶。
忘れたい記憶。
「貴方みたいな人が彼と友達なんて迷惑です」
随分な子ね。
マーさんは彼女の何がよかったのかな?
ちょっとセンスを疑う。
人のこと言えないか。
「彼にそう言って下さい」
「もう言いました」
本当に随分な子ね。
「彼はなんて?」
「貴方には関係ありません」
「ダメだったわけね」
「関係ないと今言いましたけど」
話すだけ無駄かな。でも・・・
「私は彼に関わらないでと言いました。今も基本的にそのスタンスは変えていません。その結果です」
「もっと拒んで下さい。貴方の拒否が弱いから彼がつけあがるんじゃないですか?」
非道い子ね。
同い年よね。
ちょっと信じられない。つけあがっているのはどっちなの?
マーさん彼女を甘やかせ過ぎじゃないかな。
「貴方も本当は嬉しいんじゃないですか?一人で寂しかったところで彼が優しくしてくれたから。だから好きでもないのに彼を利用しているんじゃないですか?違いますか!」

自分の中で何かがキレタ。

知らないわよ。
「・・・スズノさん」
「何ですか」
「今決めました」
「何を!」
「私は彼から離れようと努力してきました。彼の心根は嬉しかったことは認めます」
「ほら!」
「だからこそ彼に迷惑をかけないよう私なりに努力しました。それを今日を限りに止めます」
「本音が出た!元々そのつもりだったんでしょ!元からそうだったんでしょ!」
「一つ言っておきます。次は・・・容赦しませんから」
「私に何かしたら彼が黙ってないから!」
「構いませんよ。私はあなた達と違って失うものがありませんので・・・」
これだから。
逃げるなと言った当人が逃げると。
逃げる後ろ姿も可愛らしいこと。
なんだかんだ言っても一介の高校生。
スズノさんには解らないでしょうね私がいた世界の怖さなんて。
でも、覚悟しておいて。
貴女が悪いんだから。
マーさん、貴方も悪いのよ。
近づかないでって散々警告したんだから。
マーさんはナガミネさんがお似合い。
どうして彼女があれほど好き好き光線出しているのに気づかないのか。
本当に男って鈍感。
どうでもいい男は勘違いして釣れるのに本当に好きな相手は気づかない。
どうして?
彼女ならマーさんも嬉しいんじゃないの?
スズノさんと系統似ているし。
突っ走るところとか。ね。
マーさんは私には勿体無い。
何より私には大人マーさんがいる。
私は彼に捧げると誓った。
全て。
何もかも。
私は裏切らない。
彼は裏切らない。
それにしてもマーさんも罪な人ね。
ナガミネさん自身も彼のこと好きなのわかってるのかな?
二人が上手くいってくれれば・・・。

寒いものが走った。

(どうして?)
またあの生活に戻るだけ。
いつも通りじゃないの。
誰もが私を空気のように扱う日々。
「幽霊のようだからレイコなのか?」って聞いた子もいたわね。
シカコよりはセンスある。
同じ暮らしに戻るだけ。
その時マーさんはどういう目で私を見るんだろう。
汚物のような目で見るんだろうか。
(まさか・・・)
あのマーさんも同じなんだろうか。
多分違う。
今はそう思える。
でも、あの目以外でどういうのがある?
哀れみ?
ありそう。
それはちょっと辛いかも。
それとも空気のように扱うんだろうか。
まるでいないかのように。
振る舞うんだろうか。

震えた。

少し寒くなってきたわね。
帰ろう。
今日は会議がなかったなぁ。
マーさん何しているんだろう。
だから言ったのに。
私と関わったら非道いことになるって。
私だって辛いんだから。
お人好し。酔狂。私の何がいいの?大嫌い。
優し過ぎるからスズノさんは増長するんだよ。

(少し陽に当たり過ぎたかな)

だから余計に寒く感じる。
後が辛くなるから・・・。
ナガミネさん、マーさんをよろしく。
きっと貴女はマーさんのタイプだよ。
しっかりね。
彼はきっと言わないとわからない方だと思う。
応援はしないよ。自力で。
私はこれからも誰とも関わらないで生きる。
今回ので改めてハッキリした。
(私は疫病神なんだ)
大人マーさんさえいればそれでいい。
ナガミネさん・・・ありがとう。
初めて女子高生気分を味わえた気がする。
ありがとうマーさん。
全て貴方のお陰。
そして巻き込んでご免なさい。
何もお返し出来ないのが心苦しいけど。ご免なさい。本当に私何もないから。
少なくともこの件が落ち着いて、貴方にお借りしたお金を返せたら退学します。店長さんから聞いたんだ。大検ってのがあるんだってね。通信で高校を卒業出来るっていう。卒業さえ出来ればいい。約束を守れる。
ミネちゃん・・・。
ミネちゃん・・・か。

わからない。
自分がどうしちゃったのか。
彼を見てると苦しくなる。
興奮を抑えられない自分がいる。
怒りを我慢できない。
皆どうかしている。
あんな噂に踊らされて彼を無視するなんて。
マーちゃんもマーちゃんだ!
私がどれだけ心配しているかわからないの。
変な顔して私をからかって。
(好きなのかな・・・私)
駄目だ赤くなってる。
顔が熱い。
私が好きなのはカミタニなんだからね!
でも昨日は見逃しちゃった。
ちょっと前なら発狂してる所なのに。
なんで平気なんだろう。
どうせ後でネットで見れるからかな。
でもそれは前からそうだった。
なんで今は平気なんだろう。
敵わない。
レイちゃんじゃ相手が悪い。
頭がいいし、美人だし、器量良しだし、声が綺麗だし、スタイルが完璧だし、何もかもパーフェクトじゃないの。無理だよ。あんなのに敵うわけがない。
いつもいつもレイちゃんばっかり見てデレデレして!
最低よ!
「私も女なんですけど!」
あーもー苦しい。
誰か助けて。
そもそもなんで気になるのよ。
文化祭で声をかけてくれたから?
一生懸命に話かけてくれたから?
聞いてくれたから?
「それってどーよ、私チョロ過ぎでしょ~チョロインよ・・・」
・・・しょうが無いじゃない。
気になるんだから。
マーちゃんが好きなゲームってバンダムオンラインだっけ?
私はアクション苦手なんだけどなぁ。
(やってみようかな)
そうしたら一緒に遊べるし。
「何考えてるのよ!」
でもゲームだからいいじゃない。
そうよ。ゲームするだけなんだから。
でも私下手くそなんだよなぁ。
(教えてもらおうかな・・・)
「だから何を考えてるの!」
「ちょっとどうしたの?あんまり大きな声出さないでお隣に迷惑かかるでしょ」
「なんでもない!プライベートだから!」
もうママったら何度言えばわかるのかなー。
「・・・」
どうしよ・・・一緒にゲームしたい。
守備範囲はどこまでかな。
乙女ゲーとか・・・。
(駄目駄目駄目、引かれちゃう!)
でも待って!彼なら引かないかもしれない。
(それはそれでどうなの?)
いいじゃない!
そうよ。
もしそれがいいならオススメしたいのが一杯ある。
もっと話が出来るじゃない。
「ないかな・・・」
いや、わからない。

「・・・」

マッキー君とマーちゃんのBL描いたの見られたら殺されるかな。
私はどちらかと言うとリアルを題材にした方が好きだからテーマ的にピッタリだったんだけど冬コミの原稿にしなかった。
替わりに別な題材にする。
お陰でヤスっちゃんには怒られちゃったけど。
「普通の恋愛漫画なんて描いてどうするの!方向性が違い過ぎるでしょ。あれだけ話し合ったのに。そもそもファンは望んでないからこんなノンケ!どうするのよ。ミネっちがとびっきりエロイの描いてくれなかったらヘボいウチラの画力じゃ誰も買わないじゃない~」
駄目だ。
顔が熱い。
夢中で描いちゃった。
私と彼のこと。
夢の中でのこと。
「この世界で一つ、二人だけの華」
ヤスっちご免!
残したいの。
この思いを。
どうしても描きたかったの。
現実では敵わないから、せめて漫画だけでも。
言えない。
とても言えないよ。
こんなに辛いとは思わなかった。
片思いが。
好きなのに好きって言えないことが。
だって・・・。
(あ、涙出てきちゃった)
わかってるつもりだったのに・・・。
頭の中では恋愛マスターだったのに。
乙女ゲーで一体何百人を落としてきたと思っているのよ。
駄目だ・・・涙が止まらない。
辛い。
誰か。
マーちゃん。
私のこと嫌い?

「・・・なんでアイツは変な顔するの!」

なんだ急に腹が立ってきた。
人の気も知らないで。
童貞の癖に!
(だからか・・・)
って、何考えてるの!
もうやだ熱い。
「ママー、姉ちゃんがおかしいー」
「いつものことでしょ」
「いつもより非道いんだけどー」
「プライベート!」
もうやだ・・・。
今日は彼が塾だから話せなかった。
今何しているんだろう。
お習字か・・・なんでこんなスマホ時代に今更手書きなんかやってるんだろ。
フォントで凄いいいのがあるでしょ。
手書きよりフォントが綺麗でしょ。
フォント知らないのかな?
(私も行きたいって言ったらバレバレかな・・・)
そもそもレイちゃんは彼のことなんとも思ってないのかな。
あれはもう好きな人がいるって顔ね。
なのになんでマーちゃんはあんなに好きって顔しているんだろう。
レイちゃんはよく平気でいられるなぁ。
慣れているのかな。
私じゃ駄目なのかな。
やだ。
「ママー」
「プライベート!」
「ご飯まだー」
くそ、わざとだな。
生意気な糞ガキ。
会いたいなぁ。
写メ撮ったら駄目かなぁ。
マズイよね・・・こういうタイミングじゃ。
明日・・・別なの撮るふりして撮っちゃおうかな。
何しているのかな?

Published in黄色いレインコート麗子

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