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STG/I:第七十三話:衝突

「にしても日本人ばかり痛めつけやがって・・・。横の連携もマザーの連中は俺たちに任せているが、リアル国家間ですら上手くいかないのに、好き勝手やりたいゲーマーが集まったって、土台連携なんてとれるわけがない。お前には言ってなかったけど、過去何度と無くそうした取組があったことは記録にある。無様の一言に尽きるぞ。どいつもこいつも身勝手の欲深いクソ共ばかり。ゲームにまで過去の出来事や政治を持ち込む輩もいる。終いには政治家気取りの肥太った豚のたまり場になった。そいつらときたら口ばかりで何もやらない。徹頭徹尾保身の塊だ。それにしてもマザーは日本にばっかり押し付けすぎだろ・・・そう思わないか?」

サイキの意図はわかっていた。

彼に喋らせたい。

情報を引き出したい。

その裏の意図はわからない。

シューニャはサイキが何かを出来るとは思えなかった。

でも、彼は誘いに乗ることにする。

これが最後になるかもしれないから。

 

「他の国も大概無理ゲーだと思いますけどね。大戦後になんとなくSTGIを所有するハンガリー・本拠点の戦闘記録を見ました。肝を冷やしました。大変なのは皆同じなんだと実感します。偏りはありますが・・・同時に私達にはサイトウさんやタッチャンがいましたからね。あのランキングは正直で、今の日本のゲームみたいに課金最強じゃない。パチンカスでもない。その点では遥かに面白いですよ。上位のメンツのいる国。ほぼ激戦区です。面白いもんでね。結果論でしょうが、鍛えられんでしょうね。それに、もしエース級が出なかったら全滅していたでしょう。サイキさんはご存知ででしょうが、消えた本拠点、ありますよね。皆結構知りませんが」

「流石だな。公開情報にも関わらず誰も注目しないが、あるな。結構・・・ある」

「駄目なら消えるんです。まさに現実です。ひっそりと消える。消えたくないなら遮二無二やらないといけない。そうした中でサイトウさんやタッチャン、ドラゴンリーダーみたいな才能を持った人たちが出てきた。だから、もっている」

「お前自身を忘れるな」

「いやいや言ったでしょ。私は単に下手の横好きです。私はランキングに乗ったことなんて一度もない。常に圏外ですよ」

「のったんだろ? ぶっちぎりでトップだったんだろ?」

「あ~フェイクムーンですか。あれは実力じゃないから。宝くじが当たったようなもんです。戦ってすらいない。一方的にやられただけ」

「それは違う。宝くじだろうが載ったのは事実だ」

「まぁ。でも情けない理由ですよ。今でも誹謗中傷が念仏みたいに飛んできます。『実力も無い癖にと。死ねと』ね。ご尤もですが」

「非難することしか出来無い奴らには構うな。アイツラは噛みつかないと死んでしまう病気かなかんだろ。ゾンビだと思えばいい。哀れなもんだよ。楽しみを知らず、楽しみ方を知らず。常に他人と比較して噛みつかないと自我を維持できない。自分がない。生きてないんだよ。自分なりに愉しめばいいのに。俺が隊長だった時代は楽しめないヤツ、面白くないヤツは入れなかった。アイツら自分が死んでること気付いていないんじゃないのか?」

「強烈なこと言いますね。なるほど・・・生きてないか・・・。彼らときたら正当な批判ならわかるのですが、事実無根のことが多いんですよね。自己の論理に事実すら捻じ曲げるというか」

「お前なんか真面目だから相手しているけどさ。当時からよくやるなと思っていたよ。相手にするだけ馬鹿らしいぞ。タツも同じだよ。アイツなんかロビー内格闘レベル最大だったんだけど、それって難癖つける豚を捻じ伏せる為だからな」

「え? そういうことだったんですか。格ゲーが好きなのかと思ってた」

「違う違う。まー昔のアイツ知らんだろうが面白かったぞ。いきなりロビーでやりだすんだ。『どうした?』って聞いたら『ムカついた』だとよ。狂犬かよって話。笑ったよ。俺なんかアホらしくて、そんな労力すら勿体無い。相手はゾンビだからな。ターゲットをロックしたら噛みつくだけ。そこに理由はない。自我はどこいっちゃんただろうな?」

 

シューニャは彼の言い方に笑った。

サイキも笑みで応える。

給仕が「コーヒーのおかわりは?」と聞いてくる。

シューニャは冷めきったコーヒーをひと飲みし、「お願いします」と言った。

注がれるコーヒーを見つめるシューニャ。

スマホをちら見し電源を切るサイキ。

先程から何度もバイブが鳴っているのをシューニャは気付いていた。

「ありがとうございます」

シューニャは給仕に言うと角砂糖を一つ入れ、混ぜると一口ふくむ。

 

「とにかく彼女らマザーは全て知った上でSTG28を提供している。自分たちの為だけに。考えてみると当然ですよね。強大過ぎる兵器は自分たちをも窮地に追いやる可能性を秘めていますから。現実だって肝になる武装は極秘でしょ。そもそも売らないでしょ。同じだ。何も変わらない。その点で彼女らは真剣で慎重なんですよ。だからSTG21の民は自らの技術力で越えた・・・」

 

「クリア出来るって!」

 

突然話題を戻した。

力強い言葉。

直ぐにはこたえず、コーヒーを口にふくむ。

 

「ゲームではリスポーンします。何よりリトライが出来ます。リアルは出来ない。一度のミスで全て終わりです。ドームにしたって何百回、いや、千回以上・・・リトライしたか。結果、攻略法が血肉になった。ですが人生は一度キリ。一発で終わりです」

「STG28だってリトライ出来るだろ?」

「戦果が減りますから、いずれ尽きます」

「今のお前の戦果なら千回以上リトライ出来るだろ」

「そもそも新造艦はろくな武装がない。私は元からシューティングゲームが好きだったのですけど、言うなればSTG28はシューティングゲームに近いです。アレって無事故が大前提ですから。一度でもやられたら基本は詰みますよ。強化がおいつきませんから。ソレと同じです。STG28は一度でもやられたら詰むんですよ。それを補うのは時間ですが、宇宙が動き出した時、時間は幾らもないでしょう」

「でも、リトライは出来る!」

「その発言からするとサイキさんはシューティングゲームをよく知らないですね。詰みなんです。今となってはシューティングゲームを嫌いになった理由にもなりますが。昔はそうじゃなかったんですよ。・・・もっと気軽に遊べたんです。このジャンルはね。今のゲームなんて押し並べてヘビーユーザーにターゲットを絞っている。如何にお金を落とさせるか、遊びこませるか、中毒をおこさせるか。ライトユーザーや楽しみたいプレイヤーはどんどん離れていく。当然でしょ。昔は誰がというんじゃなかった。作者自身が楽しんで作っていた。私も自分で少し作りましたけどね、楽しかったですよ。クリアさせないのが目的じゃない。いかに長く楽しんでクリアしてもらうかが目的でした。だからドームは神ゲーなんですよ。私の中では。あくまで当時の感覚で、と付け加えますが。今となっては無理ゲーです。時代がありますからね。学生時代に親父へ『これからはコンピューターの時代だから!』と嘯いて買ってもらいゲーム三昧。でも、何か後ろめたくてワープロを叩き出したり何やらやりだした。プログラマーにもなった。最初に買ったゲームはフライトシミュレーターでした。夜にやると雰囲気が出るんだ・・・何度墜落させたことか・・・あれをリアルでやるなんて震えましたね」

「それだよ! シミュレーターがあるだろう。スポーツ選手だって何度も練習やイメージトレーニングでシミュレートする。例え本番は一回キリでも準備は出来る! そうして確実性を少しでも上げる! そういうものじゃないか? 出来ることはあるんだよ!」

「それは想定が出来るからですよね? 想定出来ますか? 宇宙が動くという?」

「出来るさ! 想定なら出来る。お前は未経験だが先の大戦だって『宇宙が動いた』そう思ったもんだ。そのデータはある。それを元に三倍でも五倍でも設定し、フェイクムーンのデータから、お前の言うように大量に押し寄せてきた際のシミュレートも可能だろ!」

 

シューニャは大きなため息をつく。

 

「・・・それこそ無理ゲーでしょ。あの戦いだって勝ってないんですよ。誰がやるんですかそんなもの。誰もやらないですよ。今の搭乗員をサイキさんは知らないから言える。彼らは二言目には『そんなの無理です』とか『やりたくありません』ですよ。ゲームですら無茶をしない。ましてやそんな設定、私だって嫌ですね。何故って? 無理だから」

「・・・嫌だ、出来ない、無理だ、やりたくない・・・か。餓鬼だな。なんだお前もその隊員らと同じじゃないか? 人のこと言えねーな、お前もゾンビか? あ?」

「そうかもしれませんね。だって無理なものは無理なんです。そういう日本人の精神論はもうウンザリですよ。竹槍で戦うんですか? どうぞご自由に。止めませんよ。でも・・・俺は真っ平御免だ!」

 

声を荒げた。

 

「その割にはブラック・ナイトを動かそうとしている。矛盾してねーか? そいつが引き金で地球が食われるかもしれないのにな。お前にしては随分と安直な発想だな、あ?」

「安直じゃないですね。安直ならブラックナイトを動かそうとは思わない。命がかかっているんですよ。食われるんですよ。生きたまま!」

「想像だろ?」

「ええそうですよ! だからなんですか! でも、わかるんですよ私には! 貴方が考えているほど甘いもんじゃないんですよアレは。地上に戻って鈍っているんじゃないですか? そもそも外野だから言えるんだ。もう他人事なんだよ。フェイクムーンの強さにしたって、わからないでしょ。冗談じゃない・・・アレに一瞬で貫かれた時の恐怖が貴方にわかるもんですか。月の外郭が反り返り真っ白いコアが出た時の恐怖や衝撃が・・・アンタにわかるものか!」

 

言い切るとシューニャコーヒーを一口ふくんだ。

興奮で手が震えている。

一旦カップを置き、角砂糖をもう一つ追加して混ぜる。

更に一口飲み、顔をしかめる。

サイキは明後日の方を向き涼しい顔をしている。

 

「お前には守りたい者はいないのか?」

「いませんね」

「未婚か」

「ですが、何か?」

「彼女は」

「いませんよ」

「親は」

「私は五十過ぎたら死に頃だと思ってますから」

「仲が悪いのか? そうは思えないんだが」

「さーどうでしょ。自分ではわかりません。少なくとも電話をする度に大げんかです。アイツらと来たら、現実も知らず、知ろうともせず、己が知識の範疇だけで物事を考えようとし、イメージで注文ばかりつける。てめーの願望ばかりを押し付けて。そう言う自分ななんなんだって話だよ。何をしている? 何をした? 鏡を見ろよ鏡を。無理なものは無理なのに・・・どうしてそれがわからない・・・馬鹿なのか? 私よりいい大学出ている癖に・・・」

 

黙り込んだ。

 

「俺は・・・」

サイキが喋りだす。

「子供を守りたい・・・」

「でしょうね」

「あの子らの未来が欲しい」

「でしょうよ」

「あの子らの為ならなんだってする・・・」

 

シューニャを凝視する。

 

「どうぞご勝手に。止めませんよ」

 

給仕が通り過ぎる。

こちらの様子が気になるようだ。

サイキは床を見つめた。

シューニャは天井を見上げた。

深呼吸する。

テーブルのオススメのスイーツの写真を見るとはなしに見る。

 

重い口を開く。

 

「今のはすいませんでした。私にも甥や姪がいます。目に入れても痛くないという気持ちは幾ばくかでもわかります。彼や彼女らの未来を少しでも、一分一秒でも守りたい。そういう気持ちはあります。姉に言われましたが、『甥や姪は所詮他人。我が子はその次元じゃない』と偉そうに言われちゃいました。多分そうでしょう。私が結婚しなかったのは身体が壊れているのは明らかだったからです。誰が信じなくとも・・・幾ら怠け者と罵られようが事実なんです。出来るだけ苦しまずに死にたい。この二十年ばかし、私にとっての至上命題でした。だから地球を巻き込んでの自殺と問われれば否定で出来ない。でも助けたい気持ちは少なからずあります。だからこそやってる。面倒を引き受けた。ここ数ヶ月はたまたま調子がいいに過ぎないんです。いつ動けなくなるか・・・」

「お前の身体のこと、俺は信じている」

「ええ。サイキさんぐらいでしょうね。一も二もなく信じてくれたのは。よくわからないけど受け入れてくれた。嬉しかったですよ。初めてでしたから。サイキさん。私は自覚はありませんがリアリストなのかもしれなせん。冷静に分析して何の可能性も無いものにまっしぐらに進めるほど良くも悪くも馬鹿になれんのですわ。シミュレートはしましょう。例え一人でも。正直言うとそれは失念してました。確かに出来ることだ。無理だと思わずやりましょう・・・」

 

サイキの表情が変わる。

Published inSTG/I

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