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STG/I:第七十一話:紡いだ言の葉

サイキは頭を乱暴にかき乱すと、何度か自分の頬を叩いた。

声にならない呻き声を上げ、項垂れた。

「単なる推測ですが・・・」

「なんでもいい・・・言ってくれ。俺に構わず。全部。全部言ってくれ」

「マザー達の真の狙いはブラック・ナイトなんじゃないですかね?」

サイキは顔を上げた。

「どうしてそう思う」

「簡単には説明出来ませんが・・・」

「なんでもいい!感覚的なものでもいいから。全部聞きたい」

「わかりました。アレに対してだけは過剰な興味を示しているように思うんです。フェイクムーンの時もそうでした。情報を異常に欲しがった。マザーが連邦会議を開くほどでしかたから」

「マザーがそう言ったのか?」

「ええ」

「連邦会議・・・今まで聞いたことないぞ・・・」

「やっぱりそうですか!あ、厳密には連邦会議とは言わなかったかもしれせんでしたが。会議をしていると言ってました」

「アイツラが会議・・・無い。どのみち今まで聞いたことない。でもどうして会議なんか。それがフェイクムーンとブラック・ナイトにどう関係するんだ?」

「恐らくですが、彼らがブラック・ナイトと一戦交えたからだと思います」

「あ~・・・」

「これまでもそうでした。とにかく彼女らはブラック・ナイトに関して情報を欲しがっているようでした。アレ・・・ほら、アイツが接近した時もそうでしたよね。黒いデッカイ何かが防衛らラインに突然現れて」

「・・・・あー・・・あったな・・・」

「今にして思うとアレがそうなんでしょうが、ブラック・ナイトとおぼしき黒い何かが接近した時、事もあろうにマザーは最低でも五割以上のSTG28を無駄死にさせたんですよ。異常です。あの時にマザーへ問い合わせたんですが『情報が欲しい』ということでした」

「なんか根拠があるのかと思ったら、そう言ってたのか。結局はあの時もサイトウがやったんだっけ。サイトウ・・・サイトウ、サイトウか。俺たちはサイトウなくしては何も出来ない・・・馬鹿で無力で餓鬼で・・・ゴミみたいな・・・。挙げ句、そのサイトウを消した。馬鹿の三冠王。つける薬が無い・・・」

「彼女らが隕石型の進行を止めたいというのは本心だと思います。今は対岸の炎を眺めている心境でしょうが。その為にブラック・ナイトを解明したいんじゃないでしょうか。全くの憶測ですが、私達はブラック・ナイトをおびき寄せ、調査する為の撒き餌なんじゃないですかね?・・・それが彼女らの真の目的なのでは・・・」

言ってて自分で納得した。

そうだ。

そうかもしれない。

彼女らはブラックナイトに何か問題解決の糸口を見出しているのかもしれない。

「その可能性はありそうだ。・・・撒き餌か・・・なるほど。やりそうだな・・・その方が素直だ。遥かに納得出来る・・・」

「端からマザーらも敵わない存在。全く理解不能のナニカ。それがブラック・ナイトなんでしょう。現存する宇宙の兵器では傷一つつけられない。観測すら出来ない。本当に恐れているのは、隕石型よりもブラック・ナイトなのかもしれません。共に宇宙における天災みたいなものと言えないでしょうか。でも、隕石型は観測できてある程度の対処が出来るのに対し、ブラック・ナイトはいつ何時現れて災害をもたらすかわからない。彼女らは常に彼らを注視、観測しながらも、一切索敵網にはかからない。そればかり予測も裏切られている。あの時も確かマザーが驚いていましたよね。『まさか、そんな』的な感じで」

「ああ、そうだったかもな。俺も怒鳴りつけてしまった。通達が遅いって」

「それだけに自分らの星系に突然こないとも限らない。撒き餌にくらいつているウチはある程度は安心でしょ。『あ~、あそこにいるなら安全だなとか。遠いな』とかそんな感じで。恐らくそう多く無いんですよ。もっとも最初はブラック・ナイトは単体かと思っていたので、複数いることは驚きなんですが・・・」

「ありそうだな・・・・マジであるぞそれ。だとしたらアイツらは端っから隕石型を倒せる武装はあったんじゃねえか?」

「いや・・・それはどうでしょうか。隕石型を倒すために必要以上の兵器は与えてないように思いますが。それがイコール必ず倒せるとも限らない。恐らくマザーにしても土星サイズまで集積した隕石型は初めてだと私なんかは思います。根本的に倒せるかは彼らにとっても未知数なんじゃないでしょうか。彼女らといったら常に要求されてから出す方式じゃないですか。でも、要求に対して拒んだことは無いように思います」

「ああ・・・そうだな」

「何かで読んだのですが、人は自分のレベルでしか物事を考えることが出来ないそうです。我々が考えられる程度は土台しれいている。あの宇宙ステーションである本拠点だって東京都が浮いているようなもんですよ。STGにしたって、雲泥の差。我々の要求なんてしているんですよ。親が子供の要求を聞いているようなもんです。最初は余裕じゃないですか。大きくなるに従って親側の余裕が無くなって要求に応えられなくなる。子供が不満を募らせる」

「耳が痛い話だが・・・。ますますありそうだ。くっそ・・・あの横柄な態度・・・余裕ぶった雰囲気・・・そういうことか・・・」

「こっちにしても地球人レベルの発想でしか要求出来ない。どう足掻いてもそれ以上は出せない。内政干渉になるから。そして、そのレベルなら彼女自信にとっても驚異にはならない。当然、我々自体がマザーらにとって驚異になるようなことは避ける筈ですからね。本当に隕石型を退けるほどの力を身に着けていたら別なのかもしれません・・・(何か大切なことを忘れている気がする)」

「それは俺も感じている。生殺しというか・・・希望があるように見せておいて、俯瞰してみると最初からそんなものは無いような具合だ。俺が関心するのは、アイツラはなんだかんだいって良くも悪くも干渉してこない。どんなメリットがあってと思ったが、ブラック・ナイトの調査と隕石型の足止め・・・そう考えると大きなメリットだ」

「そうなんです。STG21は我々より文明が進んでいたので、自らの技術力でその境界線を踏み越えてしまった。彼らは言ってました『気をつけろ』と。『利用するつもりが利用された』だったかな?そんことを・・・(あれ?・・・いつ聞いたっけ?)」

「そんなこと言ってたのか!じゃあアレか?・・・まさか、マザーらによって滅ぼされた・・・」

「わかりません。でも、そのような脈絡に感じられますね。いや、本当に言ったのかも怪しい。ここのところ記憶が凄い錯綜していて。夢だったのか現実だったのかわからなくなることがあるもので・・・すいません」

「いや、構わない。全て吐き出してくれ!あらゆる可能性を検討したい!」

「言われた気がするんです。実感を伴って。でも、思い出せない・・・」

「いい。アイツらからしたら猿は猿らしく遊んどれって感じか。本質的に地球はどうでもいいのかもしれんな。俺たちが宇宙で希少な存在だから、残しておきたいっていうんじゃないのか・・・だとしたら厄介だぞ。皆そう勘違している」

「恐らく違うでしょう。もしそうなら『放棄』はしないでしょう・・・」

サイキは目を丸々と見開くと、顔をくしゃくしゃにして、手で顔を洗った。

「エセニュートンは何をやってる・・・」

地の底から辛うじて発せられた。

ブラックナイト隊の兵器開発担当を長く仕切っている搭乗員。

自称数学者。

年齢不詳、性別不詳。

実は凄い人なんじゃないかとも言われているが、根拠は無く基本的に変人扱い。

隊員からは会話が通じないとのクレームも多い。

以前からリーダーとシューニャ以外は話が通らなかった。

STG28に乗ることはほぼ無いという変わり種。

このゲームは大前提として戦闘に参加することでしか戦果ポイントを得られない。そうなると船を維持できない。いよいよになるとアカウントも維持できなくなる。ただし幾つか例外的ルートもある。兵器開発に携わるプレイヤーには開発ポイントが得られるが、それを戦果に交換することも可能だ。ただし交換比率は低く戦った方が早い。エセニュートンは開発ポイントだけで機体やアカウント維持している稀有なプレイヤーである。本人も「人殺しには興味ない」というのが口癖。度々隊員と「人殺しじゃない。相手は隕石だ!」と言われては「隕石型宇宙人だろ?人殺しだよ」と口論になる。その後は想像に難くない。彼曰くゲームでは開発以外ほとんどやったことがないと言う。根っからの職人タイプ。

彼の発想力と開発力なくしてブラックナイト隊の躍進は無かったのは間違いない。開発はオープンにすることでより多くのポイントが得られる。ブラックナイトで考案された武装は多くがオープン化されており様々な部隊で採用されている。その度に彼と部隊にポイントが入る。

「マザーの制約のもと、開発に終始してもらってます。今は現実の地球でも将来的に配備が予定されている衛星兵器をヒントにしたヤツですが・・・」

「天の槍と言っていたヤツか?」

「はい。先日のフェイクムーンで本部が我々の基本構造から盗んだと思われる兵器で投擲しましたが見事に失敗しました」

「スパイか。挙げ句ににダメだったと・・・」

「ええ。ただ繰り返すようですがあれは中が”STG21”でしかたら厳密には効果測定になりません。それに我々が考えた天の槍とは仕様が本質的に違いますので。サイキさんに忠告された通り、重要な武装は盗まれることが前提で二重に用意してますから」

「盗まれることはわかっているからな」

「はい」

二人は小さく笑う。

「他には・・・なにか?何でも言ってくれ」

 

シューニャはサイキに静のデータの件を話し、預けることにした。

 

ゲームSTG28では長くスクリーンショットやグラフィックボードの機能で動画を撮影しても真っ黒で何も映らなかった。そうした仕様だ。それが本部委員会がマザーへの何度目かのオネダリで、ゲーム内機能として出来るようになったのだ。これまで委員会は「勝つためには動画での検証も必要です!」と訴え続けた。それはマザーによるリプレイ機能がある為に却下されてきた。彼女ら曰く「安全保障上の問題です」と。同じ理由でチャットログ等もゲーム内でしか閲覧出来なかった。データ改ざん等を恐れてのことだろうか。それとも言葉通り我々の安全の為か真意はわからない。

しかし「地球人にはアルバムという概念があり、それは極めて大切なものです。思い出としてとっておきたいのです!」という切り口で攻めたところ、あっさりOKが出る。比較的最近のことだ。彼女らはどこまで地球の文化を理解しているのだろうか。

ダウンロードするとゲーム内では削除され、データそのものはゲーム内でしか閲覧出来ないという制限が設けられた。実質変わらないのだが、それでも彼らは一定の満足と安心を得ることが出来る。所有欲が満たされたのだろう。現実にもクラウドに自らのデータがあることを望まない者は少なくない。他人に首根っこを押さえられているような心境だからだろう。中にはそうしたデータを外の世界に公表してやろうという目論見をもった者も少なからずいたが、そうすることで何が起きるかは少なからずの悪夢を経験すればわかる。

シューニャも経験した。リアルにはSTG28の情報を嗅ぎ回っている連中がいる。彼らが何ものかわからないが、彼らのアンテナにかかることは百害あって一利なしと言える。

 

シューニャは静にデータがあるこで彼女に危険が及ぶことを危惧し、試しにデータをダウンロードしたが静からはデータ移動が出来なかった。恐らく彼女がもうオンラインになれないからだろう。そうした仕様のようだ。コピー出来たのも一度切りで、更にやろうとすると「コピー出来ません」と警告が出る。こうしたことはコンピューターの権利関係の設定でよくあることなのでシューニャは納得した。データをマイルームのデータストックに一時預けておいたが、データストックは言うなればクラウドである。マザーと繋がっている。そのため静とSTG21が交わした情報の集積体はUSBメモリにダウンロードした。最悪の事態を想定し、マザーとの交渉の材料に使うためだ。マザーが本気になればマイルームのストックから抜き出すのは容易だろう。

 

ダウンロードするとストックデータはちゃんと消えた。地球で解析できるとは思えなかったが、一連の出来事、マザーが言っていたこと、覚えている範囲内でサイキには伝える。自分が隠しておくより安全なこと。いざという時にマザーとの取引にも使うつもりだとも伝える。

 

そして、彼には 黒なまこ の存在も初めて名言する。

 

「それは何なんだ?」

「わかりません。単なる夢では無いと思うのですが。あれで皆と会ったことも無いので何ら確証は得られません。単なる夢かもしれません。そもそも強いかどうかもわかりません。ひょっとしたら・・・。いや、本心を言えば・・・」

「言ってくれ!」

「・・・私は ブラック・ナイト だと思ってます」

「ブ・・・ブラック・ナイト・・・なんで?」

「なにか確証があるわけじゃないんです。ただ・・・なんとなくなんです」

「ブラック・ナイトを動かせるのか?ブラック・ナイトとはスターシップなのか!」

「わかりません。あくまで多分です。それと恐らく・・・動かせます」

「食われるんじゃないのか?」

「・・・食われるでしょう」

「ええっ!」

「恐らくですが・・・」

身を乗り出していたサイキはソファに身を預けた。

「恐ろしく不確実な代物だな・・・」

額に汗をかいている。

「ええ。でも、それにすがるしか無い。実はフェイクムーン戦でもそれが切り札でした。見事に失敗しましたけどね。私にはそれしかもう思い立つ方法がありません。断片的に思い出される”STG21”との対話でも彼らですらブラック・ナイトは恐れていた。同時に、隕石型宇宙人は宇宙そのものだからとも言っていた。彼らの話しぶりからすると隕石型とブラック・ナイトは敵対関係ですら無いような印象でしたが・・・。とにかく端から私達が敵う相手ではない。マザーらがSTGを全宇宙に配備しているのも基本は単なる時間稼ぎなんでしょう。その間に彼女らは打開策を考える・・・。私が思うに、本当の目的は”ブラック・ナイト”をどうにかして、それで隕石型を排除するのが目的なんじゃないですかね。裏を返せば隕石型もそれほどの驚異なんですよ。サイキさんはご存知のように、先の大戦で”ブラック・ナイト”は一人、いや一船と言うべきでしょうか、じゃないということがわかりました。隕石型をどうにか出来るとしたら最早”ブラック・ナイト”に頼るしかないと思うんです。だとしたら、私には 黒なまこ しか思い当たりません。・・・同時に、一隻では焼け石に水な気もしますが・・・」

「でも、その”ブラック・ナイト”によって”STG21”は滅ぼされたんだろ?」

「ええ、そうらしいです」

「だったら!」

「最後の時間稼ぎです。賭けです。万に一つ、その間にサイトウさんが・・・」

「賭けとは言えん。無謀だ。自殺と言っていい!」

サイキの言葉を聞きハッとした。

Published inSTG/I

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